紫外線とUVレジン
ゾンビから一応生物カテゴリーくらいまでは回復したネギです。
今日はUVレジンが固まるときの反応についての話。
UVレジンという名前ですが、レジン=樹脂という意味なので、紫外線で固まる樹脂は大体UVレジンって呼んでる気がします。化学の界隈じゃプラスチックは全部まとめてレジンって呼んだりするし。
んでこのUVレジン、アクリル樹脂に分類されます。(っても水族館の透明壁に使われているポリメタクリル酸メチル樹脂ほどいいもんでもないですが)
なので主成分はアクリル酸のエステル(雑に説明すると酸とアルコールがくっついたやつ)になります。そのなかでもいっちゃん単純な、アクリル酸メチル。こいつがUVレジンの主成分です。
主成分…なんですが、このアクリル酸メチル、実はほかの樹脂の素(モノマー)ともくっつくんですよねぇ。だから、各企業いろんなものを混ぜて性質を良くするわけで。これが安いUVレジンと高いUVレジンの差の理由ですね。
んで、このアクリル酸メチル、簡単な話、反応しやすいんですね。(求核攻撃に対して活性とか誰もわからんだろうから省略)
まぁでも反応しやすいといっても、きっかけがないと反応してくれないんですよ。
なので、UVレジンにはほんの少しだけ、光重合開始剤ってやつが入ってるんですって。
この開始剤が紫外線に当たることで電子を放出、それが一個目のアクリル酸メチルに当たって反応して、今度そのアクリル酸メチルから出た電子で別のアクリル酸メチルが反応して…ってな感じで連鎖反応するんすな。パズルゲームも真っ青な速度で。
結果、反応したアクリル酸メチル分子同士がどんどんくっついて、網目状の巨大な分子になって、固まる。
これがUVレジンの硬化のメカニズムです。
んで、ここまで説明したのでついでに。
UVレジン製品の劣化について。
さっきのアクリル酸メチルの巨大分子ですが、そのままだと性質が悪いので、各企業の工夫として、間にいろんな樹脂の分子が挟まってます。-A-A-A-B-A-B-A-A-みたいな感じで。これ、場合によってはBのとこが反応しやすかったりします。
さらに固まったUVレジンの中には、UVライトによる硬化は完ぺきではないので、光重合開始剤や工夫の添加分子、単体のアクリル酸メチルも少し余ってます。
さらにさらに、巨大分子となったアクリル酸メチルそのものも、多少は酸化します。(ここで言う酸化とは電子を放出するって意味です。酸素がくっつくわけではなく、エノラートとか空気中にごくわずかに存在する反応性がたかいものとくっついて電子が出るってことです)
結果、空気中の微細な物質によって劣化して表面はもろくなるし変色する。
日光の紫外線で光重合開始剤が反応して、それが空気中なんかの分子や企業の工夫で入ってる分子、人間の皮脂やらなんやらetcと反応してよくわかんなくなった結果、巨大分子のつながりが切れてボロボロになったり、変な分子がくっついたりで変色したり。
こうやってUVレジンは劣化していくわけです。
ちなみに対策としてはUVカットスプレーなどによる表面のコーティングなんかがありますが、完ぺきではありません。表面をコーティングするだけでも酸化は抑えられるので、寿命は延びますが。UVレジン作品は数年したら変色などを起こしてしまうものとして考えましょう。
今回はここまで。いつも以上にマニアックな話でしたとさ。
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(あんまり得意じゃないけど)革の話
とても久しぶりの更新です、申し訳ない。
何をしていたかって?ゾンビしてました。ゾンビネギです。
今回は革の話、なんですが、正直革は苦手なんですよねー。昔通ってた革細工の教室も途中で辞めてしまったし。
まぁでもご要望もありましたし(とても遅くなってしまいすまない)、今回も化学視点から革の取り扱いについて解説します。
加工していないものを皮、加工済みを革と呼ぶのが正式らしいですが、今回は主に革についてですね。
皮とか革の主成分ってなにかご存知ですか?ご存じない?ですよね。
まぁ革靴が食用にできる話なんかもあるくらいだし、なんとなくタンパク質でできてるというのはみなさん理解していると思います。まぁ動物から採れるからね。
んで、革っていうのは、タンパク質の中でもコラーゲン繊維というものからできているんですね。
そう。みんな大好き保湿成分コラーゲン。コラーゲンの繊維でできてます。
この皮、そのままでも使えないことはないんですが、繊維でできてるんで、傷が入りやすかったり、収縮したりします。洋服が洗濯で縮んだりするのと同じですね。なので、使いやすいように、薬品や植物の汁なんかで加工して硬く、収縮を少なくします。
これを「鞣し(なめし)」と言います。
鞣しはクロム系の薬品を使ったり、植物のタンニンを使ったりします。
詳しい話をすると錯体やら水素結合やらなんやらの話になるんで省略しますが、
鞣しの工程でなにが起こっているかというと、コラーゲン繊維どうしが薬品で橋渡しされて、ただの紐から網目状につながっています。これによって革の繊維密度が上がり、また繊維どうしがつながることで傷にも強くなります。(ここで言う繊維ですが、より合わせた糸というよりも、分子レベルでの微細な鎖の意味で使っています)
鞣し終わっただけの革はヌメ革と言われますが、これでもまだ傷なんかには弱いです。また、色も牛の革そのまんまです。
なので革に色を付けるために染料をしみこませたり、顔料で表面に強度を持たせたりします。
染料についてはそこまで説明することもありません。色を繊維の隙間にしみこませるだけです。
顔料というのはおもに天然や人工のプラスチックなどを混ぜて作られたもので、大体市販の革製品はこれで加工されてます。サラリーマンの通勤カバンなんかの表面を想像してもらえるとわかりやすいと思います。
職人さんが仕上げる場合、ヌメの状態でタガネを使って模様を入れたり焼いて模様を入れたりヤスリで表面を変えたりなんだり…そして顔料で処理されて革製品になるわけですね。
ここまで読んでくれた方々ならわかると思いますが、革って有機物(タンパク質)なんですよね。超大雑把に言うとお肉と一緒です。なんで、腐りにくいとはいえ、保存状態が悪いと普通にカビます。軽度なら表面を拭き取ったりこすったりでカビは取れますが、重度だと繊維中にカビが根を張っているので手遅れです。要するにパンみたいなものですかね。手垢や艶出しの脂とかいっぱいついてるのでカビやすいです。特にヌメ革。
なので革を保存するときは表面をきれいにしてから、乾燥した場所で保管しましょう。つまり保管方法は食べ物なんかと一緒ですね。乾燥剤もいいですが、革に乾燥剤が直接触れると変色の恐れがあるので注意が必要です。
革製品の便利な掃除方法とか、匂いの除去方法とか書きたかったんですが、正直布や食べ物なんかとあんまり変わんないんですよね、カビたらアウトだし(一応革用のカビ取り洗剤はある)匂いはせっせと陰干しするしかないし…あ、でも衣類と違って洗濯は厳禁です。染料が抜けて色落ちしたり、繊維が収縮したりします。
まぁでも顔料で処理されている今時の革製品は、普通に使う分には傷みにくいしカビにくいです。
身近にある生活用品の革製品。風合いの変化を楽しみながら長く使ってあげたいものです。
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今回はシルバー、黒ずみのおはなし。
どうも。今日もしがない、ネギです。
今回はシルバーアクセサリーの黒ずみの話。
よくシルバーが酸化して黒ずむ、なんて言いますよね。
でも実際はそれがどういうこうとか詳しくご存じでない方も多いと思いますので、今回はシルバーの黒ずみ・いぶしなんかについて解説します。
よく酸化、酸化って言いますけど、みなさん化学における酸化の定義なんて知らずに使っているだろうし、酸素がくっついてるのかなー、くらいに思っていると思います。
でも実は、酸素がくっついた銀って、黒くないんですよね。
化学式で書くと酸素と反応した銀はAg2Oですが、こいつ、白いです。
鋳造直後の銀の表面なんかにはこいつがついてますが、艶消しで真っ白です。
じゃあなんで銀は黒くなるのかというと、空気中にわずかにある硫黄分と反応しているからです。
化学式ではAg2Sと書く硫化銀は、黒色だからです。
ここで疑問に思った方もいるかもしれませんが、じゃあなんで酸化って言うのか?
実は化学では、広い意味では硫化も酸化に含まれます。
広い意味での酸化の定義だと、金属の銀から比べて、酸化数、という数字が増えれば、銀と何が反応しようが、まとめて「酸化」になります。
だから硫黄とくっついてるのに酸化なんて呼ぶ、紛らわしいことが起こるんですね。
まぁなので、硫黄分の多い温泉なんかに銀製品を付けたまま入ると、真っ黒くなります。これを利用して、表面を黒く加工するのが、いわゆるいぶし加工です。
それで、空気中にもわずかに硫黄は存在するので銀製品は徐々に黒くなるわけですが、全体が真っ黒な銀製品を身に着けたいって方は少数だと思います。銀は表面の高い反射率があってこそですし。なので、みなさんお手入れをされると思います。
ということで、お手入れ方法についても少し。
このお手入れですが、簡単に言ってしまうと、黒い皮膜を削り取るということです。
削り取るといってもごくごくわずかな量ですが。
手軽な方法から面倒なものまでありますが、おおよそ3つの方法に分類できます。
1.シルバークロスなどで磨く。
シルバークロスには微量の研磨材が含まれていて、表面をこすると研磨剤で黒い皮膜が削れて、ぴかぴかになります。削れるといってもミクロン単位です。
頑固な場合には本職の方などに依頼して、回転式の電気工具などで多めに削り取ります。
2.還元剤に漬ける。
これはいわゆる液体の研磨液なんかのことです。還元は酸化の反対語です。
これに漬けることによって、表面の黒ずみから硫黄が取れて、銀に戻ります。
が、その銀もイオンの状態で液に溶けだしたり、そもそもが黒ずんだことによって表面がもろくなっているので、元通りというよりは、表面を溶かすほうが近いです。
3.電解研磨
これは家庭では無理です。電気を流すことによって電気分解を起こし、表面を溶かします。表面の凸凹をなくすのに使われることがほとんどで、できるとは思いますが黒ずみを取るのに使うことはほぼないです。
つまり、一度黒くなったら、削るなり溶かすなりして、黒ずみを取り除くしかない、ということです。
なので使い込んだ銀はわずかに黒ずみが残ったり少し丸まったりして、使用感が出ます。その使用感が銀製品の魅力でもあります。
ここまでの話を理解して使用してあげることで、銀製品はより一層美しく、長持ちします。
例えば、使用しないときは空気に触れないようにすることで黒ずみを抑えることができます。
汗は体内の硫黄分を含み、なおかつ銀の表面をイオン化させて硫黄と反応しやすくするので、銀は汗がついたまま放置しないほうが無難です。
銀製品を丁寧に扱うことで生まれる輝きは、身に着けている人の品格を引き上げてくれます。
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鏡面仕上げ後編。
前編でも書いた通り、後編では具体的な仕上げ方法について書いていきたいと思います。
自分は作家として駆け出しも駆け出しなので、鉱石レジンを作る際には、UVレジンの型はシリコンではなく、お湯まるくんという、熱湯で柔らかくなるいわゆる熱可塑性樹脂を使用しています。
ですがこのお湯まるくん、熱湯でやわらかくなるものなので、いかんせん熱に弱い。
シリコンだったらある程度きれいに仕上がるのかもしれませんが、お湯まるくんの仕上がりは、レジンの硬化熱によるお湯まるくん自身の変形によってなのか、バリや、UVレジンの硬化収縮による面のへこみ・反り返りだらけ。(型取りも圧着させることになるので隙間ができやすい)
なので、まずはプラスチック用のヤスリで面を出していきます。
ここできれいに平面を出しておかないと、最終的にきれいな仕上がりになりません。
ヤスリは押し出す方向に削れるので、押すときに強めに力を入れつつ、たまに目で確認などをしながら、きれいな平面になるように削ります。
その後に前編で紹介した耐水ペーパーを使い、なるべくゆがみの少ない平面の上で水をつけながら磨きます。自分は1cm厚の硝子板を使っています。
#1000まで耐水ペーパーをかけると、すりガラス状の仕上がりになります。
すりガラス状に見えてしまうのは光の波長に対して表面の凸凹が大きいためです。#5000くらいまでかければ一応鏡面にはなるのですが、手間を考えて普通は仕上げ剤などを使います。
ということで、次にUVカットスプレーを使います。
UVカットスプレーのコツは普通のスプレー塗装と同じです。20cmほどの距離から、吹き始めと吹き終わりが当たらないようにサッと吹きかける。自分は1度乾燥させて2度塗りします。
表面張力によって凹凸が均されて、この時点で鏡面っぽくなります。
最後に、仕上げ剤。これは凹凸を均すというよりも、見え方をきれいにするもの、らしいです。おそらくはシリコーンポリマーの屈折率が関係しているのでしょう。表面をよりつややかに見せてくれます。
ここまでやって、やっと鏡面仕上げの完成です。乾燥時間などを除くと、鉱石レジン1つにつき50分ほどかかってしまいます…。ですが、つややかな表面の高級感はたまらないです。
余談ですが、曲面を仕上げたい場合は、耐水ペーパーの代わりにスポンジ研磨剤を使うとよいです。スポンジなので曲面に合わせやすいです。
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鏡面仕上げ前編。つるつる。禿げてはいない。
髪の話はするな。
いや、禿げてないですよ。どうも、ネギです。
ブログ始めたばかりなので、最初はたくさん投稿しようと思ったのですが、ネタが浮かばない。ので、また裏方の話を。
鏡面仕上げ、つまり鏡みたいにつるつるにする加工の話です。
長くなりそうなので、前編と後編に分けます。
今回は材質についての話。具体的なコツの話とかは後編で。
こちらがネギの使用している資材類の一部。
左から、UVレジン、#400と#1000の耐水ペーパー、UVカットスプレー、UVカット仕上げ剤です。これ以外にもヤスリやプライヤー、ハンドリューターなどを使いますが、今回は写真のもののみを、順番に説明していきます。
UVレジンと言いますが、みなさんどんな樹脂かご存知でしょうか。UVレジンは主にアクリル樹脂と、それらを光のエネルギー反応させて固める、硬化剤で成り立ってます。
つまり、固まったUVレジンはアクリル樹脂ということですね。
次に耐水ペーパーですが、これらの表面にくっついている粒はカーボランダムといって、硬いです。それこそダイヤモンドでもなければ大抵は削れるくらい硬いので、レジンが研磨できないということはないです。(粒が硬くても接着剤が弱いのでしばらく使うとダメになります)
三番目に、UVカットスプレー。自分が使用しているものはアクリル樹脂が有機溶剤に溶けているものです。樹脂になった後のものが溶けているのでレジンとは化学的には結合しませんが、同じアクリル樹脂なのでなじみやすく、はじかれることなく皮膜を作ります。
最後にUVカット仕上げ剤。シリコーン樹脂が主成分です。こちらは有機溶剤ではなく水に溶けています。このシリコーン樹脂ですが、市販されているものは大抵、分子の半分にアクリル樹脂が使われているので、これもアクリル樹脂になじみ、皮膜を作ります。
表面加工を行う場合、材料と仕上げ材などの相性は大事です。樹脂や塗料類は基本的に水溶性か油性かで分けられますが、その中間なども存在するので、順番を考えて使用します。
自分は写真の左から右に材料を使うことによって鏡面仕上げをしています。
つやつやした表面は、作品の格を1段も2段も上げてくれます。
(後編に続く)
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studio negiのネギです
PS4版ARK欲しい。(突然)
どうも、ネギです。
アクセサリー作家としての初ブログなのでドキドキするんじゃ~
まぁとりあえず、簡単にネギの自己紹介と行きますかね。
・シルバーアクセサリーとレジンスチームパンクアクセサリーを作っています。
・歯科技工士免許持ってます
・シルバーは主にアーマーリングメインで作っています
・レジンは主に鉱石レジンメインで作っています
だいたいこんな感じです。
自己紹介だけというのもあれなので、材料の話を少し。
レジンはエポキシレジンなどが接着剤で使われていることもあり、UVレジンもそのように使えると考える方がいらっしゃいます。ですが…
UVレジンと金属はくっつきません。
大事なことだから二回言います。UVレジンと金属はくっつきません。
(一部の金属用エポキシレジン接着剤はくっつきます)
具体的に言うと、UVレジンと金属は、化学結合しないんですね。
つまり、ただUVレジンに金属パーツを貼り付けちゃうと、ふとした拍子にぽろっと取れちゃうんです。
じゃあどうすればいいのか。金属パーツとUVレジンの表面がはがれても問題ないようにすればいいのです。つまり、がっちりと引っ掛けてあげればいい。
このがっちりと引っ掛けることを機械的嵌合とか呼んだりします。
こんな感じで、ミール皿なんかは縁が引っかかるように、内側に倒れこんでいるのはこのためですね。(縁が開いていたり、そもそもないミール皿も多いので、その場合は自分でどうにかするしかないのですが…。写真のミール皿も開いていたのでプライヤーで曲げて傾けました。)
この縁に引っかかるようにUVレジンを満たしてあげることで、UVレジンはミール皿から外れなくなります。
(上の写真は自分が半球モールドで作った猫目レジンです。縁のところであふれそうになるくらいまでレジンを満たすのがポイント)
ミール皿以外でも、金属パーツを使用するときは同じことが言えますので、UVレジン作品を買う時は、この辺りを耐久力の指標にしてみるといいかもしれません。
ではでは、皆様がよき作品との出会いがありますよう…
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